こんにちは。
分解がおわった懐中時計ムーブを組立ながら注油してあげましょう。
先に述べますけど、今回ちょっとだけ紹介する注油個所や油種、量などは”正解”がありません。あくまで個人の見解です。マニュアルをみても「適量」という最高にあいまいな言葉で濁されているありさまですから...。
さてサクッと輪列と香箱を装着。
香箱に下ホゾ、矢印部歯車の擦れる箇所と巻芯にまんべんなくグリスを注油。
このキチ車とツヅミ車の間に注油しなかった場合、巻上ポジションでの逆回しがめちゃくちゃ固くなることがあります。経験済みです。
丸穴車とネジの擦れる部分にグリスを塗布。
受と丸穴車が触れる部分にも少し塗るようにしています。こちらはなくても大丈夫なのかな。
ここまで組めたらザラ回し。
リュウズに優しくさわると、ガンギ車がシューンと回るはず。なめらかな様子でなかったり動かなかったりする場合の原因は、軸の汚れや歪み、組込不足なんかがあります。
いったん文字盤側へいって、ツツカナを挿入。
ツツカナの内側もしくは中心から突き出た2番車のどちらかにグリスを塗る。
塗らないと時間合わせが重たくなり、無理やり時刻合わせをし続けると歯車がいたむ。
裏押さえをはずして歯車が入る軸のほうへ油を塗っておきます。
右側ふたつの子鉄車が入る軸はグリス、左の細い軸にはAO-3を塗りました。AO-2やシントA、D-5などでもいいかと。何なら右ふたつもグリスじゃなくていいかも。
裏押さえを戻したら、オシドリまわりの摺動部にグリスをペタペタ。
ピンと裏押さえが噛み合うミゾ、カンヌキを押し上げる際にこすれる部分に塗りました。塗り忘れるとリューズを引くのが著しく重たくなります。摩耗がかなり進んでしまうはず。
あとはオシドリの軸やカンヌキの軸、これらが巻芯・ツヅミ車と擦れる箇所に注すのもいいと思います。
アンクルとテンプを装着してゼンマイを巻いて動くことを確認。
このとき水平垂直から見て、ヒゲゼンマイが斜めになっていないか、中心がずれてしまっていないかを確認しましょう。作業中に曲げてしまうことも少なくありません。
アンクルの爪石への注油とテンプ上下の石への注油はめんどくさいので省略。
最後に歯車の軸に注油。
赤丸で示したように、軸の周りにちょろりと油が広がっていればそれで十分ではないかと。ルビーの凹みからあふれたり、軸が埋もれるのは多すぎ?
見える部分の白い汚れも取れたし、異音もしなくなって安心しました。
この時計は試しにS-6とAO-3だけで注油しました。テンプとアンクルにそんなもの差しても大丈夫なのかと思いつつ、振り角は260°くらい出ているのを見ると安心します。
懐中時計の大きな香箱から生まれる強い駆動のおかげだと思います。普通の腕時計だとAO-3でテンプを押せるのかどうか。
巻芯を外すためにオシドリのネジを緩めすぎてもう一度文字盤を外さなければならなくなる罠だけには引っかからないように留意。
自分用なので精度はまた今度。
注油の仕方は真に受けないようにお願いしますね。ちゃんと知りたい方はマニュアルを参照してください。
では、またお会いしましょう。