「ケイン・ゲジダスという男を知っているか?」
冗談はさておき。
機械式と比べて水晶振動子式の時計は電池切れ以外でおかしいと感じる瞬間がありませんね。日差が大きく狂うわけでもなく、1日で止まってしまうわけでもなく。
しかし、クオーツにも油切れや不調があるんです。
止まる以外の不調?
新品時には油が塗布されており、残っているうちはなめらかに時計は動作を続けます。その間に電池を2度交換してもまだまだ使えそうに思えます。
ところがケースの中では少しずつ油が固まり歯車の動きを重くします。もしくはどこかから侵入した汚れや錆の粉が邪魔になります。
こうなると中のICチップが歯車を無理やり回そうとして、たくさんの電力を消費します。するとどうでしょう、電池を使い切るのが早くなってしまいます。
状態の診断にクオーツソナー
その「無理やり回している状態かどうかわからない」のを解決するのに使うのがクオーツソナーです。
クオーツテスター、パルステスター等々呼び方は人によって違います。
メーカーにより多様な値段になっており、新しいもので1万円、いにしえのソナーで3000円なんて具合でしょう。
駆動の際に発生する磁場の変化を音に変換してくれるソナーはとても便利です。
どのような音が聞こえるかによって目の前にあるクオーツの時計が電気的にどういう状態にあるのかがわかります。
まあ、まずは聞いてみよう
理論はさておき、どういった音が出るのか聞いてみましょう。
(以下3つの音は私個人のソナーで録音しており、Horotecとは関係ありません)
まずは通常時の音。
ピッ、ピッ、と規則正しくかわいらしい音が鳴っています(機種によって音が若干違います)。
駆動用のパルスが1度しか流れないので1回しか音が鳴りません。
次に無理やり歯車を回している時の音。
超高速にピピッ、ピピッ、と鳴ります。
重たくなった歯車を回すために駆動用パルスを2度送るので音が2回。
音が2倍ですから単純に考えると電力も倍になりそうですね。通常の3倍以上の電気を使っています。
超絶おかしい音を出すクオーツを聴くと...
2Pが出て、2秒運針が出て、最後にガボッと謎の音。
回路周辺がどうにかなっちゃっているようです。
以上のように当てるだけで状態の善し悪しがわかる便利な道具がクオーツソナー。
個人単位で修理を受けている人や、時計屋さんは1台持っているでしょう。
高すぎ。どうにかしてよ!
「でも1万円もするんでしょ?」と思っていても大丈夫。
自作も可能です。
コイルに3.5mmモノラルプラグをつなげただけのマイクと、アンプです。
市販のアンプにつなげてもパルスを拾えます。
amPlugなどのギターアンプなんかでも代用できます。
組み立てる手間を考えると、安いアンプとコイルが最適解かも。全部で4000円あれば揃う。
おしまい
必要かと言われればそうでもないけど、副業として時計をさわる人には持っていてほしいクオーツソナー。
外から診断するにも便利だし、クオーツのムーブメントをさわっているときに針をつけなくても正常に駆動しているかが判るありがたさ。
電池交換に持ってきた時計に電池を入れて音を聴けば電池の消耗が早いかもしれない、OHや修理が必要になるかもしれないと伝えられてより丁寧な接客につながります。
面倒なのはコイルとプラグのはんだ付けだけですね。
興味が出たらぜひとも探してみてください。メカ派の人には無用の長物かもしれませんが...。
では、またお会いしましょう。