2000円くらいでスイス式の自動巻きってのがあったので興味本位で落としてみたらですね、ETAが入っていました。
Millionと名乗るブランドの時計ですね。傷み具合もアンティークって感じ。
バーインデックスに力強いドルフィン針、なんて私の好みをわきまえた時計なんでしょうか。動くなら使ってしまいたい。
このままではまずうんともすんとも言わなくもありませんが、秒針がぴくぴくするだけですね。伝達部品周辺は死んでいないとわかります。
では巻き上げます。
チキチキチキチキパチッチキチキチキ。
ゼンマイが切れているのかな?巻いても巻いても動き出さず、力が出ない。顔も汚れてるし。
不具合の箇所は見当がつきましたから早速つきとめましょう。
かなり汚れて錆も発生しているふうな様子。ranfftによるとETA cal.2369は新しくても1967年製。半世紀以上を過ごした機械ならいろいろガタも来ていることでしょう。
回しすぎると迷子になって文字盤を再度外す必要があるので困ります。
真ん中のネジがボロボロなんですがそれは...。
裏蓋に「K.K 431121」っぽい文字。オーバーホール歴。
KK43まではわかるけど、1なのか/なのかわかりませんな。自分にだけわかる暗号なのでしょう。この大先輩はご存命であることでしょう。たのむ。
ルーレットのような赤と黒が交互に配置された特徴のある日板。
安息日でもないのに赤色の日付が来ちゃうと落ち着きませんね。18日か19日かわからない傷が入ってますね。
大きな押さえを外せば、ジャンパーを取ってカレンダーも外せそう。簡単ですね。
しかしこんなジャンパー今では考えられないな。わざわざ軸で差し込んである。
ジャンパーの下に潜んでいるバネもこの状態なら力がかかっていませんから逃げだす恐れもありません。
インカブロックの枠がねじ止めってのがどうも違和感ありますね。取り外しやすくて助かる...?受穴石を外してしまえば枠をとる必要もないのでこれはメリットありますかね。
切替機構はそのままでいいでしょう。
自動巻きはいったんおいておき、いつもの輪列へ。
60年代からETAはこの顔のままなんですね。ETA cal.2801でも秒針が中心にきて2番車はズレてますね。
だんだん見慣れてきました。近頃ではTUDORでも触ったし。
テンプは大丈夫そうですね。安心しました。
ちょっとした修正くらいならやりますが、やらなくて済むに越したことはない。これはこのまんま行きましょう。
爪はちょっと怪しい。停止量のバランスが悪い。
出爪の全停止量が大きすぎるのと入り爪は小さすぎるかな?いまは放置しましょう。そもそも時計が機能しなければ爪の調整も徒労です。
丸穴車がガッツリ欠如。由々しき状態デス。
これが不動の原因です。
手で巻いているときに、欠けた歯がくるとまず竜頭が空回りします。ぎりぎり残った下半分の歯がかすめている状態。
次に角穴車に抜けた箇所がさしかかるときっちり噛み合えず、角穴車が回ってはいけない方向へグルっと動きゼンマイが解放されてしまう。
んー、丸穴車そのものはガラ箱から拾い上げたものがいくつかあって径や歯形が使えそうなものも。しかしこの丸穴は内側が抜かれており、コの字。さすがに対応できない。平たい歯車しかなかった...。
ひとまず不具合を見つけられたのでヨシとしましょう。eBayとかで探しときますか。
他の病気がないか探すのも大切です。
壊死したネジがありますね。
合うやつで埋めときました。
地板には緑青が浮いてます。相当ほったらかしだったんでしょうな。
歯車は現行と同じような形。アミダの数が違う。
中央に2番車が来る機械を触る回数が圧倒的なせいで4番車にグリスをさしそうになります。4番車がそんな重たい油さされると動きませんからね。
ゼンマイが切れている様子もなく、丸穴車が死んでいるだけですね。
難易度はどうってことはありませんでしたけども替えの効かない状態が残念。
洗浄を終えたら組み立てます。巻き上げようがないせいで組立は保管のためになってしまいますね。
では、またお会いしましょう。