損するあほう

野良の時計修理技能士がいろんな時計を開いていくブログ。

改めてメカクオーツを解説

SEIKO (TMI) VK63 を使った自作クロノグラフが一部で流行しているのはご存知の方もいらっしゃるかと思います。

今回はその VK63 に代表されるメカクオーツクロノグラフの機械について、仕組みなどを今一度文字にしてみます。

 

いつもお世話になっている Caliber Corner から、表題 What is Meca-Quartz Movement? の内容を翻訳しながら、私からのコメントや情報も追加して進めます。

文字多めです。

 

 

私はVKでクロノを組み立てた経験がないため、作る際の話ができません。あくまで機械についての情報をまとめるのがこの記事の趣旨です。

自作用パーツに関しては以下の記事で紹介だけしています。

yu-john.hatenablog.jp

 

メカクオーツとは何を表しているか

こちらから画像を拝借

一般的(狭義)には、クオーツのクロノグラフのうち次の特徴を持つものを指します。

  • 時計の基礎機能はクオーツで駆動する
  • クロノグラフ動作にスイープセコンドや瞬間帰ゼロが使われている

広義のメカクオーツは上記クロノグラフ以外のものも含みます。

  • 機械式のような機構を備えたクオーツ
  • クオーツでありながら機械式のように動作する(スイープセコンドなど)

これらの特徴があるクオーツもメカクオーツであるとした場合、以下のシリーズもメカクオーツですね。

  • VK クロノグラフシリーズ
  • VH スイープセコンドクオーツ
  • スプリングドライブ
  • (AGSやキネティックも??)

 

狭義のメカクオーツは VK63 を念頭に置いた項目であり、少なからず偏った部分があるかと思います。

 

なおメカクオーツは通称です。SEIKOを含めた時計メーカーが積極的に使う名称ではないことに注意してください。SEIKO以外にもメカクオーツの特徴を持つ機械を作っているブランドがあります。クロノグラフに明るくない私は知りません。)

 

どれもこれも調速はクオーツを用いているので、精度が確保されています。
機械式のような針の動きを楽しみつつ日差を気にしなくても良いとは、なんとも魅力的。

 

VK63 は通常のクロノグラフとどうちがうか

VK シリーズがメカクオーツと呼ばれる理由は瞬間帰ゼロとスイープセコンド。

動画でアップロードしてくれている方がいるので、ありがたく引用させてもらいます。

youtu.be

ボタンを押すと、パチッと一瞬でゼロ位置に針が戻る瞬間帰ゼロ。これを可能にしているのは「三叉ハンマー」と呼ばれる機構と、ハートカムです。

TMI 2025-2026 のカタログに以下の説明文が載っています。

かつて三叉ハンマーは機械式クロノグラフ専用の機構でしたが、VKプレミアムシリーズのクロノグラフにもこれを継承させました。クロノグラフの新たな高水準を確立します。

TMI 2025-2026 catalogue から抜粋、John訳

画像右側にあるとおり、針の根本にハートカムが採用されています。リセット時にこれを三叉ハンマーで操作して瞬間帰ゼロを実現しているものだと思われます。

 

一方で通常のクオーツクロノグラフにはハートカムがありません。電子的に記録された初期位置に向けて針がチチチッとゼロ位置へ戻ります。一瞬ではなく少し時間がかかります。

 

この三叉ハンマーはグランドセイコーの機械式クロノグラフでも採用されていた部品だそうです。気になる方は以下のSEIKOのページへどうぞ。
キャリバー 9SC5 | グランドセイコー公式サイト

 

VH31 もメカクオーツと呼ぶのか

時計愛好家の中でも議論が分かれる部分であるようです。
VK こそが唯一のメカクオーツであると称える者や、 VH などもメカクオーツだとするゆるい層もいます。

先にまとめると以下の通り。

  • 公称はされていない
  • "メカニカル"という単語は VK, VH 両方の紹介資料に使われている
  • どう呼ぶかはコミュニティに委ねられている

 

2点目に挙げたように、SEIKOがカタログの中で"mechanical"という単語を VH31 にも使用したことが、この議論を複雑にしている原因と言えそうです。

先ほどと同じ TMI 2025-2026 カタログには以下の説明が書かれています。

センターセコンドは機械式ムーブメントに似て、1秒に4回動きます。

TMI 2025-2026 catalogue から抜粋、John訳

「機械式ムーブメントに似て」スイープセコンドのように動けば VH シリーズもメカクオーツとして十分ではありませんか。だって VK シリーズのクロノグラフにもスイープセコンドは搭載されていますから。

 

過激派の方々もこの説明を見ても VH シリーズはメカクオーツでないと言うのでしょうか...。あまり煽らないほうがいいですかね。

 

VK63 は本当に"メカニカル"なのか

 

これまでの項目で見てきたように、メカクオーツにおける"メカ"はムーブメントを象徴する外観が大部分をしめます。

というか、それもそのはず。どのクオーツムーブメントでも中身には必ず輪列が存在します。アナログの針を動かすには必要です。間違いなく機械式と共通する機構であり、"機械式"そのものです。非メカクオーツでもこれは同じです(デジタルディスプレイは違います)。

 

この観点に立てば「VK63 はメカニカルである」と言えます。

上の画像は VK63/VK67 共通のテクニカルガイドから切り取ったものです。
見ての通り wheel and pinion (車とカナ)がいくつも見えます。 VK63 にも歯車が組み込まれており、クロノグラフの駆動に必要な機械的要素です。

 

メカクオーツの良いとこ

大きなメリットは2つ挙げられます。

  • クオーツ由来の高精度
  • 薄型化

機械式然としたクロノグラフを搭載した時計でありながらクオーツを使用した機械ですから、本当のメカニカルクロノグラフと比べてはるかに薄くなっています。

例えば、グランドセイコーSLGC007 が15.3mm厚なのに対し、 Pagani Design の PD-1701 は13mm厚で、2mm以上薄くなります。200万円近いグランドセイコーも機械式クロノグラフは分厚さを必要とするようですね。

 

VK63 に限って言えば、安価でかつ自作用部品がたくさん出回っていて楽しいのもひとつ挙げられますね。

 

メカクオーツの悪いとこ

デメリットも同じく2つでしょう。

  • ゼロ位置調整ができない
  • 針使いまわし厳禁

通常、クオーツクロノグラフの機械はリセット機能を備えています。適切なリュウズ引き出しとプッシュボタンの組み合わせでリセットモードに入り針の位置を調整できる機能です。

ところがメカクオーツはこの機能がありません。組立てるとき、変な方に針を差してしまったら...。想像しただけでも恐ろしい。

 

針の使い回し厳禁には理由があります(あくまで推奨ですが)。
一度使った(抜いた)針を使いまわすと、瞬間帰ゼロで吹き飛ばされたり、ゼロ位置がずれたりします。ゆるくなってしまったハカマに対して帰ゼロのトルクが強すぎるからですね。

 

おしまい

自作するには知らなくて良い情報がたくさん出てきて困ったでしょう。私も同じ感想です。しかし、針を毎回交換しないといけない点は、頭の片隅に置いたほうが良さそう。

ざっくりまとめると、メカクオーツは通常の文脈だと VK シリーズを指しますが、その他のクオーツを指す場合もあるって感じですね。ちなみにつづりは Mechaquartz でも、 meca-quartz でも何でもいいようです。そりゃそうだ、コミュニティから生まれた造語だもの。

Caliber Corner にも、ありがとう。今後もよろしく(一方的)。

 

仕組みを知ってより楽しいメカクオーツライフを。

 

では、またお会いしましょう。

 

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