損するあほう

時計とかタバコとかPCとか、残しておく。※個人の感想です

ST2130?? いやいや、もっとヒドい

そういえば新品で買ったまま放置していた機械があるのを思い出しました。

分解して遊んでみます。

 

皆さん大好きな ETA 2824-2 ではなく、そのクローンです。2020年7月現在の24USD → 2700円弱。NH35も当時はそれくらい安かった気がするなぁ。

 

今回紹介しているクローンはおそらくクローンの中で最も買ってはいけない機械です。
見分け方は文字盤側にある謎のおさえ。

このでっかくて薄汚い板がついたものは私が買ったものと同じ目印。そもそも本家にはこんなの付いてなくね?あとおそらくだけど、これ2836のクローンっぽい。2824-2のクローンとして売ってたのに...。

 

今回一番伝えたいのは、 これと同じクローンは買うな です。

 

さて、ケースに詰めている状態から取り出して使おうと思ったその時...

 

がりがりっ と音がして時間が合わせられません。リューズが空回りします
ところが逆方向は針が回せます。進むことでしか時間を合わせられない悲しい運命を背負っています。むしろ前向きでいいことか?

おそらくどこかの歯車が浮いてしまっているんでしょう。新品なのに。

 

それだけでなく、なぜかこの機械は振動数が21600bph。 

え?おかしいですよね? 2824-2のクローンならば28800bphのはず。でも実物を見ても遅い。

 

色々とおかしなところもありますし、中身を見ましょう。

 

まず回転錘の色。安っぽいギラギラの光り方に思えるんですが、先入観ってやつでしょうか。

 

いつぞや手に入れたPT5000の写真はこんな感じ。

 

手元にある劣悪ST2130の回転錘は重り部分っていうんでしょうか、外縁も必要以上にギンギラギン。中心部のジュネーブストライプも目が粗くて品のない雰囲気。

別に光っていようが地味だろうが、回ってさえくれればヨシとします。

 

干支足が固定位置まで届かない不具合も見つかっています。
これに関しては私の手に入れた文字盤に不良があるとも考えられますので、なんとも言えません。本家を持っていないため比べられないのが残念です。

あと0.5mmは長くないとダメですね。固定用の腕が寂しそうにこちらを見ています。

汚いカサ車おさえを外してカレンダー側を分解します。

ボロボロの日送り機構が出てきました。傷がすごいし、よく見ると本家と形が違う?? 日送り車だけは代替品として使えそうですね。

 

と思った矢先に観察していて気が付きます。

日送り車の歯が曲がっている。

もう一度お伝えします。これは「買ったままの新品」。分解はこれが初回です。歯が怪しい上に汚れもヒドい。

不安を通り越し、デスヨネーくらいに思ってきた。

 

問題の切り替え周り。なんか指紋べたべただぞ?

問題の小鉄車が乗る位置(ポスト?)はピッタリではなく径が0.1~0.2mm小さいようで、どうも小鉄車がガタガタと動きます。あと、小鉄車は上下が逆に装着されていました

 

洗浄後にこの位置を調整したり、やってはいけないことをしてみましたが結局は安定せず噛み合わずじまい。この低品質がよぉ。

 

ポストを曲げて調整できる + 切替レバーに光沢がない→柔らかい金属 + 焼き締めてない→もしかして真鍮... と頭をよぎりましたが、うん、3000円してないし、なんというか、何十年も使うものではないなと。 

 

さてひっくり返って裏スケから見える面を進めてみましょう。

ここだけ見ているとマシなクローンかと思えてきます。しかしよく見ると指紋だらけですがね。

普段から2824-2などをオーバーホールしている方は気づくかもしれません。本家と違う箇所がちょこちょこあります

と言われてもパッとしませんよね。以下は本物のETA2824-2の画像を同じようなアングルで撮ったものです。

f:id:yu_john:20210627231111j:plain

ネジの位置や大きさ、テン受用のダボ、機留めネジの位置、地板の切欠けの有無などなど...探せばもっとあるかもしれません。

 

私ですか? 見分けられませんでしたw

 

裏返せば汚いのがバレてしまう自動巻きの歯車たち。傷だらけ。

切替車に穴がありません。本家は裏側にも長方形の穴が開いています。内部には油をささない指示ですので穴があってもなくても構いません。

 

アンクルとガンギ。なるほど、21600振動/hの理由がはっきりしました。

ガンギ車の歯の数が少ないですね。これは6振動でよく見る15枚のガンギ車。これと何故か弾力の弱いヒゲゼンマイを組み合わせて21600振動/hを実現しているようです。精度は意外と良かったのが腹立つ。

アンクル表面が粗い?もう驚かなくなってきたよ、ぼかぁ。

 

歯車は思ったよりもキレイな状態。

歯数が合えば安価な交換品として使えます。あまり歓迎できた品質ではないけど、お財布事情次第では選択肢なのかな? 気は進みません。

 

乾燥させた地板と回転錘のツーショット。

 

値段を考慮するととってもよく出来ていると思います。25USDが販売価格ならば工場はそれよりも低い価格で売って利益が出るわけですからね。

 

とはいえ積極的に活用したくはありません。本家との互換性も怪しいし。
何度でも言いますが、この機械は新品です。汚れまみれで歯車もグラグラ、振動数もダウングレードを施された商品です。写真には載せていませんが、受石に開いた穴が中心からズレているなんてのもありました。

正直使う理由がありません。精度に関わらない箇所でのみ部品取りに使っていいかと思える程度。バネとかネジとか?最後の手段かな。

 

皆様も安さに騙されて小銭を失わないように気をつけてください!

 

それでは、今年もよろしくお願いいたします。