損するあほう

野良の時計修理技能士がいろんな時計を開いていくブログ。

SEIKO 5 with caliber 6309 その2

残念な外装だったセイコーファイブを開いて機械を観察しましょう。

 

感想だけではなく、ちょっとだけ説明口調で進めてみますね。

 

まずは文字盤。いい状態ですね。非常に好感が持てます。

針を揃えて、ポリ袋などで文字盤を保護しながら針外しを行うのはもちろんですが、その前に一度針同士の隙間(クリアランス)も確認します。

装着し直すときの指標となるため、知っておくと迷わずに高さを決められます。

 

6309の文字盤は横からネジで締めて固定する方式でした。緩めてから文字盤を水平に持ち上げるだけなので簡単ですね。

押し込んでいるだけの7S26などは、いつかプラスチックが形を覚えてしまって文字盤が固定できなくなりそうですよね。

 

プラのスペーサーを外すかどうかは趣味かなと思います。私は外します。

 

さっきの写真でも言われているように「𫞂車押エ上方ニ外ス」と曜日ディスクを外せます。𫞂車押エとはCリングです。針抜きなどで取ります。飛翔防止にここでもポリ袋などを使います。

今回は古い機械ですのでディスク裏にも汚れがついてしまっています。ロディコでちょっとだけ取ってあげてもいいでしょうね。

 

そうすると日板おさえが出てきます。これがなければカレンダーディスクがぴょんと外れてしまうシロモノです。時々ドライバーを滑らせてカレンダーに傷をつけてしまうこともありますから、気をつけてネジを回します。

持ち上げるときは写真真ん中に向かって左側から伸びているバネに気をつけましょう。これは曜日ディスクを規制するバネです。引っ掛けたり、つまんで持ち上げないようにしましょう。すぐに曲がります。明後日の方向に向くこともあります。

 

あとは一つずつ持ち上げて行くだけですから簡単です。写真を撮るなりメモ書きをするなりして場所と機能を記憶しましょう。

あとは操作をして手応えを感じましょう。不自然に重たくはないか、かみ合わせが外れる箇所はないか、異音はないか、などなど注意しながらひとつひとつ進みます。

 

汚れも少なく摩耗もほとんどなかったこの個体はスッスッと分解できました。ちゃんとオーバホールにも出されてたのかなぁ。サビやグリスの黒い粉が散らばってないからひどい状態とは程遠いですね。

 

今回面白いなと思ったのはこの形状。早送り用の歯車です。すべてを一体にしている点と裏側に"腕"の部品が隠されている点です。

とげとげの強そうな大きいほうが右に左に振り回されて早送り機能が実現します。右側に行くと直接カレンダーを回して早送り、左に行くと伝え車を回して曜日を早送りします。

 

油の痕が見えますね。組立時にはグリスを食べさせてあげましょう。

 

ここで文字盤側の分解は一旦終わりです。私は切り替えの部分を最後に外す人なのです。もちろんここで外してくれても構いません。正解はありませんから。特にこの機種は手巻き機構が搭載されていないため、ゼンマイを解くときには何も影響しませんし。

 

 

プラスチックのスペーサーの話に戻ります。今の私は外す派です。つけたまま載せても分解は進められますし載せられる機械台も持っていますが、どうもグニグニした感触がありますし、力を入れると抜け落ちそうなのです。落としたことはありませんが一応...。

 

機械台はこの大きさ専用のものです。某オークションサイトで偶然入手した機械台で、金属製です。掴むタイプよりこっちのほうが私は好きです。

今なら切削サービスや3Dプリントサービスで簡単に作れますから、持っていない人はじゃんじゃん作って快適に作業するのがいいですよ。

 

次回は表側の分解をします。(前回は外装)

 

では、またお会いしましょう。

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