大学時代の友人の一人がメキシコで働いています。お給料は小切手から振込に戻ったのでしょうか。
そんな彼にはまともに使える時計が無いそうです。パチモンのフランクミュラーと、おじい様から受け継いだSEIKOのSeahorseを持っていますが、前者は普段使いするにはゴツすぎる、後者は文字盤のインデックスが外れてしまった。腕には何も巻かれないまま出勤しているのかな?
とにもかくにも、常用できる腕時計が手元にないみたい。
苦労しましたが組み上げました。
好みは直接尋ねました。ガシガシ使える時計が望ましいですね。
はい、部品集めました。組むだけなら4種類集めたらいい。
ムーブメント | ケース | 文字盤 | 針 |
3854 | 4070 | 1371 | 952 |
以上4点を集めてちょっとさすだけで完成。1万円とちょっとあれば手に入ります。ムーブメントもMiyota以外にすれば安くも高くもなります。
さて進みます。
今回の文字盤はMiyota8215とETA2824の両方に使えるように、干支脚が4本伸びています。これを整えないと載らないわけで。
1時と6時の脚がMIYOTA用。ETAはさようなら。ニッパーで切断。ちょっとやすってならすといいのかな。
ちなみに1500円を下回る文字盤は多少の傷も何のその。
画像では見えない縦の傷がうっっっっすら存在します。値段を考えると良くできてる。個人的には許容範囲。自分で作れるようになりたい。
文字盤は干支脚をこのネジで固定。先にちょっと引き出しておくのがコツ。
針をさしていくわけですが。ここで大問題が発生。
恐ろしいほどぎりぎりで、ふちを進んでゆく針。これ以上に頭を抱える事態が起こっていました。
分針がそもそもツツカナに入らない。そう、時計に固定できない。
残念ながら工作の精度が期待したほど良くなかったようでして、グッと押し込んでもコロッと落ちてしまう。
こうなってしまっては何も進まないので仕方がなく、ハカマを拡げましょう。
精密やすりでちょろりと削っては分針をさして回して外れないかを確認。この確認を数十回、時間にして1時間はコツコツシコシコ...。最終的には挿さりました。
8215の分針のためには1mmの穴が必要です。やすりでどうにかなる範囲で助かりました。これが秒針だったとしたらどうやって拡げたでしょうか...。
気分をとりなおして次ですよ。
巻芯を切って長さを調整。
今回のケースに付属したねじ込み式リューズ、長さはネジにほんの少しかかるか否かの程度。リューズ側にバネが搭載されており、押し込んだ際は巻芯が外側に沈んでネジを噛ませる構造です。初めてなので緊張しました。
ケースへ搭載します。
が、再び問題が浮上。
スペーサーがガタガタで機械が自由に動いてしまう。特に縦方向に。
残念ながら今回購入したセットの中にはケーシングクランプが付属しておらず、縦での不具合への対策がたてられません。
動かれるとローターが干渉して巻き上げられなくなったり、針が止まったり、傷が入ったりと、たくさんの不利益が生じます。
ですので動きを制限したい。写真のスペーサー上側と裏蓋の間にくる隙間を埋めてやると大丈夫そう。
用意したのが真鍮線。これを、
こうじゃ。
長さや径は合わせながら切って整形。美しくまっすぐよりは多少うねっていた方がケース内部で適度に引っかかって、下手に回ってしまうのを防止してくれるだろう想定。
よっぽど角度つけてのぞき込まなければバレません。仲間内だけでのやりとりであれば、どうということはない。
裏蓋は何もしてないのに汚れがたくさん。洗浄機へポイ。
ゴムパッキンに薄くシリコングリスを伸ばして裏蓋をぎゅっと締める。
紆余曲折ありましたが、ひとまず形になりました。
カレンダーが動く時間帯と保護フィルム貼ったままなのはお許しを。
いろいろと苦労した針ですが、横から見ると下図のようになっております。
分針と秒針がケースにばちこりと当たってましたので泣く泣く傾斜をつけてごまかしています。地を這うように天井のガラスを這う秒針は他の時計では見られない特別感がありますね。
夜と昼を使わざるを得なくなったメキシコ行きの時計。
友人に断って、動作確認もかねて私がひと月ほど腕に巻いておきます。
知的飲料が脳にしみこむ作業終わり。
では、またお会いしましょう。
エル・プサイ・コングルー。