あると思います。
先日の6R15で気が付いた点も踏まえてちょっとまとめておきましょう。
テクニカルガイドから部品を示しながら。
NH3x、4Rxx、6Rxxもしくは7Nxxあたりで起こりうる事象かと思います。
(ここで紹介する原因がすべて正しいと保証するものではありません)
夜12時を過ぎても日付・曜日が変更されない
日送り車が変形しています。
24時間ごとにカレンダーを送る部品です。
プラスチック製の大きな歯車。
これについているカレンダーディスクを回す爪が潰れたり曲がったりしているせいで、日板や曜板を正しく回せなくなっています。
22~04時頃の禁止時間帯にカレンダーの早送りをしようとリューズを操作してしまった際に故障する部分です。
ズレているのに気が付いて修正をする際は、まず針回しの状態にして時計が「夜の時間帯」になっていないことを確認しましょう。11時あたりで日板などが動き始めなければお昼ですね。
針を戻さず、なるべく進めてカレンダーが送られてから調整をおこないます。朝でも夜でも6~7時なら安全ですね。
カレンダーが窓からズレている
ジャンパーが折れています。
ディスクを一定の角度で固定するための部品です。
日付がずれる場合はこちらの部品。
曜日の場合は下の部品。
とても細いバネで支えられているだけで、力がかかると簡単に折れます。分解組立時に注意。
上と同じく無理に日付を変更するとココにも負荷がかかるかもしれまん。
止まっていた時計の日付を合わせる際にパチパチパチッと高速に日付を合わせるのではなくて、パチッパチッと少しずつ丁寧に調節してください。蓄積してバネが弱ると表示位置を維持できなくなります。
あまり壊れることが無い箇所だと思われます。
あるいは文字盤の干支足が折れています。
むしろこれのが多い。
早送りポジションで回しても反応が無い
第1カレンダー修正伝え車の噛み合いがゆるくなっています。
巻芯に刺さっている部品で、縦方向に回転してカレンダー修正用の輪列を動かします。
ツヅミ車や角穴車と違い円でハマっており、巻芯を引いて回せるようになるのは”巻芯に引っかかるから”です。
巻芯の抜き差しを経ると修正伝え車の一部が広がっていき、ガバガバになります。
これを直すためには締める必要があります。
画像で言えば左側、歯の切られていないほうをツツカナ締めか硬いピンセットなどでギュギュっと内に押してください。強すぎると巻芯の抜き差しがつらくなります。少しずつ締めましょう。
昨今の2級時計修理技能士検定で使われる7N43ではこの部品が半透明のプラスチックです。NH35などの金属部品よりも容易に変形しやすく、分解組立を一度するうちにダメになり得ます。ゆるくなりやすいし締めやすい。
カレンダー周りの部品に異常が無いのに巻芯を回しても早送りが不可能な場合はこれを疑ってみると良いでしょう。
以上の3つが分解修理時にしばしば目にする不具合です。
その他
その他の原因としては組込不足が一番。
例えば
- 歯車の軸がしっかりはまっていない
- ネジが締まりきっていない
- 部品の上下が逆
- 上記のまま操作して部品が変形している
しっかり部品を観察していれば防げる事象です。
分解時、動いている時の状態を上下左右から見て覚えて、写真にデータとして残して、ひとつひとつパーツを持ち上げるごとに形を確認しましょう。他の機械なら子鉄車でさえ上下がついていることが多数です。
おわり
書きながら思いついた不具合の理由はこれくらいですかね。
今回紹介したのはあくまでSEIKOの機械、特にNH,4R,6Rなどの普及機のお話で、別のメーカーで別のキャリバーになればもちろん全然通用しないことだって考えられます。
ほとんどが不可侵な腕時計においてカレンダーは、私たち人間と機械との間でやりとりが可能な数少ない箇所です。だからこそ我々が原因で壊れかねません。
これを見る人が全員技術者とは限りませんが、どうして壊れるかがわかっていれば故障を防げるかもしれません。
では、またお会いしましょう。