クオーツのオーバーホールです。
身内以外の方からの依頼は初めてですね。
文字盤のシミで特定される恐れがありますので機械部分からだけです。誰も見てないでしょうけどね。
電池交換に持って行っても動かず「オーバーホールで直るかもよ?」と言われてこちらへ回ってきました。
オメガのcal.1456。実質はETA 976.001。マニュアルも探せば出てきます。
経年で金属製スペーサーが汚れています。
機止めは錆びて2枚とも折れていました。コンステは生活防水程度のケースですから湿気がそのうち入るでしょう。
先端だけ錆びてるってなんだかおかしいな。これは汎用品でまかないませう。
干支足はここのネジで外す感じ。
円じゃなくて一部切れた形のネジで干支足をグッと押して固定しているだけ。
回路ブロックがかぶってて回しづらい...。
切り替えまわりは無理に外さないほうがよさそう。一部が圧入っぽく見える。
日の裏やツツカナは簡単に抜けます。乗せるだけの短針用部品はツツカナと呼ぶので合っているのだろうか。
しかしペルラージュも見えなくて悲しそう。
ネジを回すと回路とコイルがガボッと抜けちゃう。大胆な作り。
これってつまり、コイルに何かあったら回路ごと交換になるからお値段が...。
この976.001は新品だと1万円弱する高級ムーブメントですから回路ブロックもお高いんでしょう??
あとは駆動用の歯車と規制レバーだけ。
たくさんの汚れがローターに。
これは動かない原因とも言えますが、おそらく違います。
ロディコの上をやさしく転がして吸着させてお掃除。
たったこれだけで動いていただなんて。30個も持ち上げていない。
薄くて小さくできて電池交換だけで何年も動く。そりゃあ機械式じゃなくてクオーツがレディースの主流になりますよねぇ。
オーバーホールして消費電流も0.3μA前後と定格内で元気に動いています。
もともとちゃんと動いていましたけどね。電池交換したお店の人が早とちりしたのでしょう。
以下余談。
私の経験だと、ETAのクオーツはリューズを押し込んでから針が正しく動くまでに時間差があります。
1秒運針のものは20秒くらい分針が動かない。
20秒運針のものは1分くらい分針が動かない。
今回預かったコンステも発振2回分くらいは針が動きません。
電池おさえをちゃんと締め忘れたか、ろくに確認もせずに動かんと踏んだのでしょう。現場に立つ人なら私よりももっと詳しくあってほしいものです。
976.001に始まりスイス製のクオーツはプラ部品が少なくて安心です。半生は使えるでしょう。
経過観察をして持ち主へお返しします。
では、またお会いしましょう。