古い時計だけでなく、機械式の腕時計をさわるうえでヒゲゼンマイとは切っても切れない関係。切れたら困る。
今までに何度かヒゲゼンマイ修正を行いました。
変形したヒゲゼンマイを直す練習、変形したヒゲゼンマイを直す練習 2回戦、OMEGA cal.625を分解します、CITIZEN 6650A 分解だけ、6R15の分解、TUDOR ETA cal.2784 分解 表輪列側だけ
記事を並べてみるとたくさんやっています。ブログになっていない事例ももちろんあります。
さて、0.5mmにも満たないような感覚で渦巻きを作っているヒゲゼンマイを修正するにはふさわしい道具を用意せねばいけませんね。
私が用いているのは以下のよっつ。
これだけで可能です。少なくとも私はこれらだけで実用的な範囲への修正を行いました。
知識と経験を蓄えておけば大丈夫。怖いと思う人は出来る人に任せればいいと思います。私の場合はお小遣い稼ぎに使えるので習得しようというだけの話です。お金が人を突き動かすってのはマジっぽい。
鶴型ピンセット
ヒゲゼンマイをつかむのに使います。鶴型である必要はないんですけどね。
加工が必須です。整形と研磨。
先端の厚みをできる限り減らしかつ剛性を残します。先端1mmくらいを薄くしてあとは削らず厚くしておく。全体を通して薄すぎると、ピンセットを握る力でくにゃりと曲がり先端が正しく合いません。
上記と並行して鏡面仕上げを施します。これはヒゲゼンマイを傷つけないため。
私が使っているのはコーナンで手に入る商品。
直刃と鶴型のセットで500円を下回るお値段。修正用と普通の作業用で使えます。
ピンセットは何本あっても困りませんから、買いましょう。
オイラー
ヒゲゼンマイをつつくのに使います。何の変哲もないオイラー。先端は薄いほうがいい。
市販のオイラーをたたいてつぶして薄くしてもいいし、ステンレスの棒などで自作してもいい。ヒゲゼンマイの隙間に正しく入る薄さに調整しましょう。
使わなくなったオイラーを流用するとよいでしょう。
ロディコ
何も言うまい。テンプ一式を乗せて固定するのに使います。
なるべく綺麗なものを使いましょう。修正したテンプは洗浄してから使うのであまり影響ないかもしれませんが。
テンプ一式だけ載せるのか、受けごとなのか、ヒゲゼンマイだけにするのか、このあたりは自分で決めてください。本当はヒゲゼンマイだけに分解してからが良いかと思われます。
キズミ
実体顕微鏡があるならいらない。視力が高ければいらない。明工舎の2度半(5倍)キズミを使っています。
倍率が高い物を使うと顔が近づきすぎて影を作ってしまいます。作業が進められるのであれば高倍率でも低倍率でも大丈夫。使い慣れたものを採用しましょう。
おしまい
正しい道具なんてのは存在しません。あくまで「私はこれでやっています」の例です。
一番求められるのは勘と経験、そして度胸。「ここを触ればあっちが広がる」「どれくらい力を込めたら曲がるか」個体によって症状は違います。見極める力と恐れることなくヒゲゼンマイを修正する意気さえあれば大丈夫。
私もまだまだ回数が足りません。ジャンクをたくさん買ってじゃんじゃか直したいもんです。
では、またお会いしましょう。